第19回

肩口ねこ背で起こる症状=五十肩(肩関節周囲炎)=

 

 

 

カイロ博士プロフィール

甲木寿人(かつき・ひさし)
早稲田大学卒業。2002年3月まで、早稲田大学体育局講師(非常勤)として「姿勢と健康」の講義を受け持ち、現在公開講座「生涯学習」を担当。
日本カイロプラクティックフォーラム会長を務める。

Eさん(52歳・営業)は、50歳の誕生日を目前にしたある日、なにげなく右手を上に上げたとき、肩の上のほうでピリッと電気が走るような小さな痛みを感じました。
そのうち、手を上に上げたり、後ろに回すだけで痛みが伴うようになり、やがて後ろのポケットに右手を入れることもできないくらい痛みがひどくなったのです。
夜、寝ているときは、右手を下にしたり寝返りを打つこともできなくなりました。
じつはEさんは、これが五十肩の症状である事を知っていました。
以前、先輩に同じような肩の痛みの話を聞いていたからです。その後Eさんは、ほぼ1年間、仕事の量をやや抑え、無理な運動をさけて、痛みと上手につき合うように心がけました。
やがて、肩の痛みは少しずつ減り、最初の痛みから1年半後にはすっかり消えてなくなったのです。

片方の肩がある日痛くなる
五十肩は、主に50代を中心とした中高年の人をある日突然襲う肩の痛みのことを指します。
痛みで片方の腕が上がらなくなり、不自由な思いをします。
英語では、フローズン・ショルダー(凍りついた肩)と呼んでいます。
ある日、肩の痛みのため、肩の運動が不自由になります。
はじめの3ヶ月くらいは、上腕(肩から肘まで)にうずくような痛みがあって、肩の痛みが続く場合もあります。

次の三つの症状があったら五十肩と自己判断してよいでしょう。
肩の痛みのために...
1、
腕が上方に上がらない。
2、腕が側方に上がらない。
3、後ろ手がまったく組めない。

例えば、下着や服を着たり脱いだりするのが不自由になりますが、肩の痛みは左右どちら片側です。
右利きだから右肩とは限りません。
肩の痛みや腕を動かせないという不快感から、いろいろな病院を巡る方が多くなります。
そこで痛みの最中にアイロン降り運動(痛む側の手にアイロンを持って振る運動)とか、尺取虫運動(壁に痛む側の手をはわせて少しずつ上に上げていく運動)などを指導する医師がいますが、そんな無理な運動をする必要はないと私は考えています。

1年〜1年半で自然消滅
五十肩は、長年肩に無理を強いてきた結果の症状です。
体があえて肩に痛みを出すことで休養を命じているのだと考えてください。
というのは、じつに不思議なことに、五十肩はだいたい1年から1年半を過ぎると、なぜか自然に治ってしまうのです。
ただし、注意したいことは、片方の肩が治った1〜2年後に、今度は反対側の肩に同じ症状が出る人が多いのです。
両方の肩が同時にという人はあまりいません。
いずれにしても、肩口ねこ背を治す胸はり体操を続けることでこの症状を治すことができます。

さて、ここまで取り上げてきた腕の痛みやしびれ、腱鞘炎、五十肩(肩関節周囲炎)などは、いずれも肩口ねこ背が原因で、筋肉や運動神経に起こる症状でした。
この後取り上げる症状は、肩口ねこ背による自律神経への障害から起こるものです。
背骨のゆがみや自律神経の障害になって、いろいろな痛みや症状を起こすのですが、残念ながら現代の医療は、このことについてほとんど目を向けていません。
胃が悪ければ胃だけ、心臓が悪ければ心臓だけの専門分野があり、背骨のゆがみが自律神経の障害になるとは、まったく考えていないのです。

次回は、風邪・咳き込み・ぜんそくです。お楽しみに!

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